昔描いたキャラクター、イラストレーターに描いてもらった立ち絵、SNSで使っている一枚絵。
こうした手元のイラストを、そのままVTuberに使える場合があります。
ただし、「VTuberに使う」が何を意味するかで必要な加工が変わります。
画面に絵を表示するだけなら、一枚絵のままでも使えます。
話したときだけ口を開ける程度なら、口を閉じた絵と開いた絵などを用意する方法があります。
自分のまばたき、口、顔の向きに合わせてキャラクターまで動かしたいなら、Live2D用の加工とモデリングが必要です。
まず「この絵はLive2Dに使えるか」ではなく、「この絵をどこまで動かしたいか」から考えると判断しやすくなります。
手元のイラストは3段階に分けて考える
同じ一枚絵でも、使い方によって準備は違います。
| やりたいこと | 手元の一枚絵 | 主な追加作業 |
|---|---|---|
| 配信画面に固定表示 | そのまま使える場合が多い | 背景処理・サイズ調整など |
| 声に合わせて簡単に動かす | 元絵を利用できる | 口開けなどの差分を追加 |
| 顔の動きに合わせてLive2Dで動かす | そのままでは不足しやすい | パーツ分け・描き足し・モデリング |
この違いを飛ばして「VTuber用イラストにはPSDが必要」と考えると、話が分かりにくくなります。
PSDが必要になるのは、主にLive2Dモデルとして加工していく段階です。
動かさないなら、一枚絵のままでも始められる
VTuberだからといって、最初からキャラクターが顔に合わせて動かなければならないわけではありません。
ゲーム画面や配信画面の端へキャラクターを置き、自分は声だけで配信するなら、一枚絵でも始められます。
この場合、目、口、髪などを別々のレイヤーに分ける必要はありません。
背景付きのイラストでも表示自体はできますが、ゲーム画面などへキャラクターだけを重ねたい場合は、背景を透明にした画像が使いやすくなります。
手元に完成したPNGしかなくても、まず配信を試すという目的なら利用できます。
重要なのは画像形式より、そのイラストを配信で使用する権利があるかです。
話したときだけ口を動かすならLive2Dまで作らなくてもいい
静止画では少し物足りないけれど、本格的なLive2Dモデルまでは必要ない。
この場合は、声に反応して画像を切り替える「PNGTuber(ピングチューバー)」という方法があります。
例えば、
口を閉じた通常の絵。
口を開いた絵。
の2枚を用意し、自分が話しているときだけ口を開いた画像へ切り替えます。
まばたき用の画像や笑顔などを追加できるソフトもあります。
この方法なら、手元の一枚絵を元に、口や目だけ少し描き変えた画像を追加すれば使える場合があります。
「顔の角度まで自分に合わせて動かしたいわけではない」という人なら、最初からLive2D化する必要がないこともあります。
顔に合わせて動かしたいなら、一枚絵のままでは足りない
自分が目を閉じたらキャラクターもまばたきする。
口を開いたらキャラクターも話す。
顔を右へ向けたらキャラクターも右へ向く。
こうした動きをさせたい場合はLive2Dなどのモデルが必要になります。
ここでは手元の一枚絵を、そのまま配信ソフトへ入れるだけでは足りません。
目、口、眉、髪、輪郭、体などを、それぞれ動かせる状態に分けていきます。
例えば目だけでも、
白目。
瞳。
まつ毛。
必要に応じてハイライト。
などに分けます。
髪も前髪、横髪、後ろ髪など、動かしたい範囲ごとに分けます。
この作業が「パーツ分け」です。
一枚絵からでもLive2Dにはできる
「すでに一枚にまとめてしまったから使えない」とは限りません。
Live2D公式のチュートリアルでも、一枚になっているイラストから部品を切り分けて加工する方法が案内されています。
そのため、PNGやJPGしか残っていない絵でも、パーツ分けと描き足しを行ってLive2D化できる場合があります。
実際、一枚絵を持ち込んで、パーツ分けからモデリングまで依頼できる制作者もいます。
ただし、一枚絵から作れることと、そのまま使えることは別です。
加工量は元の絵によって大きく変わります。
一番問題になるのは「今は見えていない部分」
通常のイラストでは、前髪に隠れた額や、髪の裏、口の中などは描かなくても完成します。
一枚の絵として見えないからです。
しかしLive2Dでは、その部分が動きます。
前髪を揺らせば、今まで髪に隠れていた額が見えます。
瞳を動かせば、一枚絵では描かれていなかった白目部分が見えることがあります。
顔を傾ければ、髪に隠れていた輪郭が出ます。
首を動かせば、顔の後ろに隠れていた首が見えることもあります。
そのため、一枚絵からLive2D化するときは、単純に絵をハサミで切るように分けるだけではありません。
見えていなかった部分を新しく描き足す作業が必要になります。
「元データが残っている絵」は加工しやすい
手元にあるイラストが同じ一枚絵でも、残っているデータによって加工のしやすさが違います。
例えば、イラスト制作時のPSDやCLIP STUDIO PAINTなどの作業データが残っており、
髪。
顔。
服。
目。
装飾。
などが別レイヤーになっている場合です。
Live2D用として十分な分け方ではなくても、元のレイヤーが残っていれば加工しやすくなります。
逆に、すべてを一枚へ結合したPNGしか残っていない場合は、必要な部位を切り抜き、重なった部分を描き直す作業が増えます。
したがって、「PNGだから使えない」「PSDならそのまま使える」という単純な違いではありません。
中身がどこまで分かれているかが重要です。
PSDなら何でもそのままLive2Dにできるわけではない
手元にPSDがあっても、それだけでLive2D用イラストとは限りません。
通常のイラスト制作では、
線画。
下塗り。
影。
ハイライト。
といった「描き方の工程」でレイヤーを分けることがあります。
Live2Dで必要なのは、それとは別に「動かす部位」で分けたデータです。
例えば髪を揺らしたいなら、髪が独立している必要があります。
まばたきさせたいなら、目を動かせる構造にする必要があります。
Live2Dへ読み込む段階では、動かす部品ごとに整理したPSDを用意します。
つまり確認すべきなのは「PSDを持っているか」ではなく、「動かしたい部位を分けられる元データがあるか」です。
Live2Dへ読み込むPSDには形式上の条件もある
パーツ分けが終わったら、Live2D Cubism Editorへ読み込むためのPSDに整理します。
公式マニュアルでは、モデル用として読み込むPSDについて、
PSD形式。
RGBカラー。
8bit/チャンネル。
という条件があります。
また、色が意図せず変わらないよう、sRGBのカラープロファイルが案内されています。
ただし、今手元にあるイラストがPNGやJPGだから、その時点で諦める必要はありません。
一枚絵を加工し、パーツを分けたうえでLive2D用のPSDを新しく作ることができます。
「今のファイル形式」と「最終的にLive2Dへ入れるファイル形式」を分けて考えます。
顔や体が大きく隠れている絵は加工量が増えやすい
一枚絵からLive2D化するときは、構図も影響します。
例えば、
前髪が片目を完全に隠している。
手を顔の前に置いている。
大きな小物で体が隠れている。
首や肩が髪でほとんど見えない。
腕を組んでいる。
といった絵です。
静止画としては魅力的なポーズでも、動かしたときに現れるはずの部分が描かれていません。
そのため、「使えない」とまでは言えなくても、描き足しが多くなります。
反対に、顔や体の形が分かりやすく、動かしたい部分が大きく隠れていない絵なら、加工しやすくなります。
一枚絵を見積もりに出すときは、単に「Live2D化できますか」と聞くだけでなく、「どの部分を描き足す必要がありますか」まで聞くと判断しやすくなります。
小さい画像しかない場合も「使える・使えない」では決められない
SNSアイコン用など、小さな画像しか残っていない場合もあります。
これも、ファイルが小さいからLive2D化できないと一律には言えません。
ただし、配信中に顔を大きく表示する予定なら、元画像を拡大したときに線や細部が荒れることがあります。
さらにパーツ分けのために細かな部分を切り抜いたり描き足したりするため、高解像度の元データが残っている方が作業しやすくなります。
元の大きなデータがない場合は、その絵をそのまま切り分けるより、デザイン資料として使い、新たにVTuber用イラストを描き直した方がよい場合もあります。
ここは画像サイズだけで決めず、実際のデータをモデラーやイラストレーターに見てもらう方が確実です。
他の人に描いてもらったイラストは「技術的に使える」だけでは足りない
ここは、自分で描いたイラストとの大きな違いです。
イラストレーターへ料金を払って描いてもらった絵でも、それだけで著作権が自分へ移っているとは限りません。
そのため、Live2D化する前に契約や利用条件を確認します。
少なくとも、
VTuber活動に使用してよいか。
YouTubeなどで配信してよいか。
収益化してよいか。
パーツ分けや描き足しなどの加工をしてよいか。
別のモデラーへ元データを渡してよいか。
必要なら新しい衣装や表情を追加してよいか。
といった範囲です。
「商用利用可」とだけ書かれていても、第三者による大幅な加工まで含むとは限りません。
分からなければ、元のイラストレーターへ「この絵をVTuber用Live2Dモデルに加工し、モデラーへデータを渡してもよいですか」と具体的に確認する方が分かりやすくなります。
自分で描いた絵でも購入素材が入っている場合は確認する
イラスト自体を自分で描いていても、すべてを自由に加工・配信できるとは限らないケースがあります。
例えば、購入した衣装素材、アクセサリー、ブラシ素材などを使用しており、その利用規約でVTuberモデルや商用利用への条件が定められている場合です。
自作絵なら著作権の問題は全部なくなる、と一括りにせず、他人の素材を組み込んでいる場合はその利用条件も確認します。
依頼前に「何をしたいか」を先に伝える
手元の一枚絵をモデラーへ見せるとき、最初から自分でパーツ分けを完成させる必要はありません。
むしろ、
雑談配信で顔中心に使いたい。
まばたきと口を動かしたい。
顔を左右へ向けたい。
髪を揺らしたい。
腕は動かさなくてよい。
といった「必要な動き」を先に伝えた方が、必要なパーツ分けを判断してもらいやすくなります。
パーツの細かさは、作りたい動きによって変わるからです。
手元の絵を無理にVTuber用へ直してから相談するより、元データと完成画像をそのまま見せ、「この絵をこの程度動かしたい」と伝える方が手戻りを減らせます。
結局、手元のイラストはそのままVTuberに使える?
画面へ一枚絵として表示するだけなら、そのイラストを配信で使う権利があれば、そのまま利用できます。
声に反応して口などを切り替える簡易アバターなら、元の一枚絵を利用しつつ、必要な差分を追加する方法があります。
自分の顔に合わせて目、口、髪、顔の向きまで動かすLive2Dにしたいなら、一枚絵のままではなく、パーツ分けと描き足しが必要です。
そして、他人に描いてもらったイラストなら、技術的に加工できるかとは別に、VTuber利用や改変が許可されているかも確認します。
つまり、「そのまま使える絵」の条件はPNGかPSDかだけではありません。
最初に見るのは、
「どこまで動かしたいのか」
「加工できる元データが残っているか」
「その加工と配信をする権利があるか」
の3点です。
この3つが分かれば、今の絵をそのまま使うのか、パーツ分けするのか、VTuber用に描き直すのかを判断できます。
出典
Live2D|1.イラストの加工
Live2D|素材分けについて
Live2D|PSD作成上の注意点
Live2D|PSDのインポート
DenchiSoft|VTube Studio Introduction & Requirements
veadotube|introduction
文化庁|誰でもできる著作権契約マニュアル 第2章3(2)B
文化庁|文化芸術活動に関する法的問題についてよくあるご質問