一枚絵からLive2Dにできる?|描き直しが必要になる境界

すでに持っている一枚絵からでも、Live2Dモデルを作れる場合があります。

「Live2D用に描かれていないから全部描き直し」と決まっているわけではありません。

ただし、一枚の画像を目や口の形に切り取れば、そのままLive2Dになるわけでもありません。

判断の境目になるのは、元絵では見えていない部分をどれだけ新しく描かなければならないかと、完成後にどこまで動かしたいかです。

正面に近い立ち絵で隠れている部分が少なく、動きも大きく求めないなら、元絵を活用しやすくなります。

反対に、斜め向き、大きなポーズ、顔や体を隠す構図で、さらに大きく動かしたい場合は、描き足しでは済まず、描き直した方がよい範囲が増えていきます。

一枚絵でも「パーツに分けられる」ならLive2D化できる

普通の一枚絵は、完成した状態で見ることを前提に描かれています。

Live2Dでは、その絵を目、口、眉、髪、顔、首、体などに分け、それぞれを動かします。

この作業を「パーツ分け」または「素材分け」といいます。

元のデータがPNGやJPEGの一枚だけでも、必要な部分を切り出し、新しいレイヤーへ分けていくこと自体はできます。

実際に、一枚絵からLive2D用のパーツ分けを受け付けている制作サービスもあります。

そのため、

「レイヤーが分かれていないからLive2Dには絶対使えない」

ということではありません。

問題になるのは、切り出したあとです。

切っただけでは足りないのは「後ろに絵がない」から

たとえば、前髪を一枚絵から切り取ったとします。

元の絵では、前髪の後ろにある額は見えません。

そのままLive2Dで前髪を揺らすと、前髪が動いた場所に何も描かれていない部分が出てしまいます。

そのため、前髪に隠れていた額や顔の輪郭を描き足します。

同じことが、さまざまな場所で起こります。

目を動かすなら、瞳の後ろに隠れていた白目が必要です。

まばたきさせるなら、まつげやまぶたを別に扱える状態にします。

口を開けるなら、閉じた一枚絵には見えていなかった口の中が必要です。

顔を傾けるなら、髪に隠れていた輪郭や耳が見えてくることがあります。

首を動かすなら、顔の後ろに隠れていた首の上部も必要になります。

つまり、一枚絵からLive2Dにするときは、

「見えている絵を分ける作業」

だけでなく、

「動かしたとき初めて見える部分を作る作業」

が必要です。

正面に近い立ち絵は比較的流用しやすい

一枚絵を流用しやすいのは、正面に近い立ち絵です。

左右の目が見えている。

口が見えている。

顔の大部分が髪や手で隠れていない。

首から体まで自然につながっている。

腕が顔や胴体へ大きく重なっていない。

こうした絵であれば、元の見えている部分を利用しながら、足りない部分を追加しやすくなります。

もちろん、パーツ分けと描き足しは必要です。

それでも元絵の多くをそのまま使えるため、「キャラクター自体を描き直す」のではなく、「Live2D用に加工する」という作業に近くなります。

斜め向きになるほど描き直す場所が増える

少し難しくなるのが、キャラクターが最初から斜めを向いている一枚絵です。

たとえば顔が右向きなら、左側の顔は大きく見え、反対側は狭く描かれています。

この絵をLive2Dで反対方向まで向かせようとすると、元の絵には必要な形が存在しません。

変形だけで対応できる範囲もありますが、大きな動きを作るほど無理が出やすくなります。

「一枚絵が斜め向きだからLive2D化できない」とまでは言えません。

ただし、

正面付近で少し動けばよい

のか、

左右へ大きく顔を振りたい

のかで話が変わります。

元絵から遠い角度まで見せたいほど、新たな作画が必要になります。

手・髪・小物で顔が隠れている絵も判断が変わる

一枚絵として魅力的でも、Live2Dへの加工が大変になりやすい構図があります。

たとえば、手を頬へ当てている絵です。

一枚絵では、手に隠れている頬や輪郭を描く必要がありません。

しかし手を動かすモデルにするなら、手を外したあとに見える顔を作らなければなりません。

大きな前髪で片目が隠れている場合も同じです。

その髪をほとんど動かさないなら、隠れた目を細かく作る必要性は低くなります。

しかし髪を揺らし、隠れていた目まで見せたいなら、元絵に存在しない目や眉、顔の一部を新しく描く必要があります。

武器、マイク、ぬいぐるみなどを身体の前に持っている絵でも、その物を動かしたいなら後ろ側を作らなければなりません。

「何かに隠れている=使えない」ではありません。

隠している物を動かすかどうかで、必要な作業が変わります。

口パク・まばたき程度なら分ける範囲を抑えられる

一枚絵からLive2Dにしたいからといって、最初からすべてを細かく分ける必要はありません。

何を動かすかによって、パーツ分けの量を変えられます。

たとえば、

口を動かす。

まばたきする。

瞳を少し動かす。

顔をわずかに傾ける。

髪を少し揺らす。

という程度と、

顔を大きく左右へ向ける。

髪の毛束を細かく揺らす。

腕や手を動かす。

上半身を大きく傾ける。

衣装やアクセサリーも個別に揺らす。

というモデルでは、必要になる素材が違います。

パーツを細かく分けるほど、細かな動きを作れるようになります。

同時に、一枚絵から切り出して補修しなければならない場所も増えます。

「この絵からLive2Dにできるか」を考えるときは、絵だけを見るのではなく、完成後に何を動かしたいかまで決めます。

描き足しで済むか、描き直しになるかは3段階で考える

実際には、「使える」「使えない」の二択ではありません。

そのままに近い状態で流用しやすい

正面に近い。

大きなポーズを取っていない。

顔や体があまり隠れていない。

元画像が十分な大きさで残っている。

動かしたい範囲が小さい。

この場合でもパーツ分けや隠れた部分の描き足しは必要ですが、元絵を残しやすくなります。

パーツ分け+かなりの描き足しが必要

前髪で顔が隠れている。

腕が胴体へ重なっている。

長い髪が身体を覆っている。

衣装や装飾が複雑。

顔や身体をある程度大きく動かしたい。

この場合、見えている部分は流用しつつ、隠れている場所を新しく作る作業が増えます。

元絵を完全に捨てる必要はありませんが、「画像を切り分けるだけ」と考えない方がよい状態です。

描き直しを検討した方がよい

強い斜め向きや横向きなのに、正面から左右まで大きく動かしたい。

顔や身体の大部分が手・髪・物で隠れている。

大きなポーズを付けた絵を、自由に腕や身体が動くモデルへ変えたい。

画像が小さく、切り出したパーツを拡大すると粗さが目立つ。

一枚絵の光や影が特定のポーズに強く固定され、パーツを動かすと不自然になる。

こうした条件が重なるほど、元絵を切り貼りして直すより、Live2D用として描き直した方が作りやすくなる場合があります。

重要なのは「一枚絵だから描き直す」のではありません。

元絵から足りない情報を作る作業が多すぎるかどうかです。

元のPSDがあるならPNG一枚だけより判断しやすい

手元に完成したPNGだけでなく、イラストを描いたときのPSDなどが残っているなら、依頼時に一緒に確認してもらいます。

PSDとは、イラスト制作時のレイヤーを残せる画像データです。

たとえば髪、顔、服などがある程度別々のレイヤーで残っていれば、全部が1枚に統合された画像から切り出すより加工しやすい場合があります。

ただし、PSDがあるだけでLive2D用になっているとは限りません。

線画と塗りが分かれているだけで、目や髪などは一体になっている場合もあります。

見るべきなのは「PSDかどうか」ではなく、動かしたい部品がどこまで別に残っているかです。

他の人に描いてもらった一枚絵は先に加工許可を確認する

技術的にはパーツ分けできる絵でも、そのまま第三者へ渡して加工してよいとは限りません。

イラストレーターへ依頼して描いてもらった作品であれば、最初の依頼条件や利用規約を確認します。

「VTuber活動への使用可」と書かれていても、別の制作者がイラストを切り分けたり描き足したりすることまで含まれているとは限りません。

Live2D化では、

パーツを切り分ける。

隠れた場所を描き足す。

輪郭や色を修正する。

場合によっては形を変更する。

といった加工が発生します。

そのため、元のイラストレーターへ、

「Live2D用に第三者がパーツ分け・加筆してもよいか」

まで確認すると判断しやすくなります。

一枚絵からLive2Dへ変えられるかという技術上の判断とは別に、加工してよい作品なのかも確認が必要です。

新しく描き直すか迷ったら「元絵を残す作業量」を見る

気に入っている一枚絵なら、できるだけそのままLive2Dにしたいと思うかもしれません。

その場合は、いきなり「全部描き直してください」と依頼する必要はありません。

まずパーツ分けのできる制作者やモデラーへ元画像を見せ、

どこまで既存部分を使えるか。

どこを描き足す必要があるか。

希望する動きまで作れるか。

大きく描き直す部分はどこか。

を確認します。

特に重要なのは、「Live2Dにできるか」だけを聞かないことです。

ほとんど動かさなければ使える絵でも、大きく動かしたい場合は条件が変わるからです。

「まばたき・口パク・顔の左右・髪の揺れまで欲しい」

というように、欲しい動きを一緒に伝えます。

判断は次のように整理できます。

元絵と希望判断の目安
正面寄り・隠れが少ない・小さな動き元絵を流用しやすい
正面寄りだが髪や服の重なりが多い描き足しを前提に検討
手や物で顔・身体が大きく隠れている新規作画部分が増える
斜め向きで同じ角度付近だけ動かす流用できる場合がある
斜め向きから左右へ大きく動かしたい描き直しを検討
大きな固定ポーズから自由に手足を動かしたいLive2D用の再作画を検討
他人が描いた絵加工許可を先に確認

一枚絵からLive2Dにできるかどうかは、「レイヤーがないから無理」とは決まりません。

Live2D公式でも、一枚になったイラストを後から部品へ分けて加工する方法が案内されています。

ただし、動かしたときに見える部分は新たに描かなければなりません。

その新規作画が少なければ「パーツ分け+描き足し」で済みます。

元絵に存在しない顔、身体、衣装などを広い範囲で作る必要が出てきたら、「一枚絵を加工する」より「Live2D用として描き直す」に近づきます。

一枚絵を見て判断するのではなく、元絵で隠れている場所と、自分が動かしたい範囲を重ねて確認することが、描き直しの境界を見つける方法です。

出典

Live2D|Live2D Cubism 基本チュートリアル「イラストの加工」

Live2D|素材分けについて

Live2D|PSD作成上の注意点

CLIP STUDIO PAINT|Live2Dでイラストを動かそう! キャラクターのパーツを切り分ける