「今は一枚絵で活動するけれど、続いたら同じキャラクターをLive2Dにしたい」
この予定なら、完成したPNGだけを残すより、編集できる元データを残しておいた方が後から使いやすくなります。
ただし、最初から完全なLive2D用パーツ分けまで依頼しなければならないわけではありません。
重要なのは、あとで目・口・髪などを分けたり、隠れている場所を描き足したりできる状態へ戻れることです。
「PSDという形式なら大丈夫」でもありません。
後から編集できるレイヤーがどこまで残っているかを確認することが、将来のLive2D化に備えるポイントです。
最低限残したいのは完成PNGではなく編集できる元データ
普通の一枚絵として使うだけなら、背景が透明なPNGを受け取れば困らないことがあります。
しかし、Live2D化すると状況が変わります。
目を別にする。
口を開けられるようにする。
前髪を動かす。
首から顔を分ける。
腕を体から離す。
といった加工が必要になるからです。
PNGやJPEGは、完成した見た目が1枚の画像になっています。
そこからでもパーツ分けはできますが、目や髪を切り出し、なくなった部分を描き直す作業が増えます。
一方、制作時のレイヤーが残った元データなら、顔、髪、服などが別に残っている可能性があります。
将来Live2D化する可能性があるなら、完成画像とは別に「後から編集できる制作データを残せるか」を確認しておきます。
「PSDをください」だけでは足りない
ここが特に間違えやすい部分です。
PSDは、Photoshopなどで使われる画像データ形式で、レイヤーを保存できます。
しかし、PSDだから必ず編集しやすいわけではありません。
たとえば、
顔も髪も服も全部1つのレイヤー。
線画と色は分かれているが、目・口・髪は全部一体。
完成した一枚絵を1レイヤーだけ入れたPSD。
こうしたデータもPSDとして保存できます。
それでは、後からLive2Dにするときの作業量は完成PNGと大きく変わらない場合があります。
欲しいのは「PSDというファイル」ではなく、「絵を構成している要素を後から編集できる元データ」です。
依頼するときは、
「レイヤーが残った編集可能な元データも納品できますか」
と確認する方が目的が伝わります。
CLIP STUDIOで描かれているなら元のCLIPファイルも役立つ
イラストレーターがCLIP STUDIO PAINTを使っている場合、制作元は「CLIP形式」のファイルになっていることがあります。
これは作画中のレイヤー、フォルダなどを保持した編集用データです。
Live2D Cubismへ直接読み込むときはPSDを使います。
しかし将来パーツ分けをやり直したり、塗りや線を直したりする段階では、制作ソフト本来の元データがある方が修正しやすい場合があります。
そのため可能なら、
編集用の元データ。
Live2Dへ渡すためのPSD。
完成確認用のPNG。
を同じものだと考えず、分けて管理します。
ただし、元データの納品を受けられるかはイラストレーターの契約・料金設定によります。
「描いてもらったのだから元ファイルも当然もらえる」と考えず、依頼時に納品物へ含まれるか確認します。
Live2D化がまだ未定なら完全なパーツ分けまでは不要
「いつか使うかもしれない」という段階で、目、白目、瞳、まつげ、前髪の毛束などを全部Live2D用に分けてもらう必要はありません。
完全なパーツ分けは制作作業が増えるからです。
まだ活動を続けるか分からないなら、
完成PNG。
縮小する前の元サイズのデータ。
レイヤーを統合していない編集用データ。
後から加工してよいという利用条件。
を残しておくところから考えられます。
この状態なら、Live2D化が決まった時点でモデラーやイラストレーターへ元データを確認してもらい、必要なパーツを作っていけます。
最初からLive2D用PSDを完成させるのではなく、「後から作り直せるところまで戻れる状態」を保存しておく考え方です。
Live2D化する可能性が高いなら描く段階からレイヤーを分ける
「活動が続いたら、ほぼ確実にこのキャラクターをLive2Dにする」
という場合は、もう一段準備しておく意味があります。
たとえば一枚絵を描く段階から、
前髪。
後ろ髪。
顔。
左右の目。
口。
首。
体。
腕。
揺らしたいアクセサリー。
などを別々に描いておきます。
この時点でLive2Dへそのまま読み込めるほど細かく分ける必要があるかは、将来求める動きによります。
ただし、髪と顔が最初から一体になっているより、後からパーツ分けしやすくなります。
描き終わったあとに全部を1枚へ統合して、その統合後ファイルだけ残すことは避けます。
完成PNGは作っても、統合前のデータを別に残しておきます。
「隠れている部分」を最初から描いておくと後で楽になる
Live2Dで特に問題になるのは、レイヤーだけではありません。
普通の一枚絵では、見えないところを描く必要がありません。
前髪で隠れている額。
瞳に隠れている白目。
閉じた口の内側。
顔に隠れている首。
服に隠れている腕。
こうした場所です。
しかしLive2Dでは、前髪や瞳、口、顔などが動きます。
すると一枚絵では見えなかった場所が画面に現れます。
Live2D公式も、動いたときに見える部分をあらかじめ広めに描き足しておくことを案内しています。
将来Live2D化する可能性がかなり高いなら、レイヤーだけでなく「今は隠れていても、動いたら見える場所」を残しておくと、後の描き直しを減らせます。
一枚絵用の見た目とLive2D用の元絵を分けて保存してもいい
一枚絵としては、髪、影、光、服などを重ねて完成した状態が一番きれいに見えます。
Live2D用に扱いやすいデータは、それとは少し違います。
たとえばLive2Dへ読み込むPSDでは、1つの部品について線画や塗りなどをまとめて1レイヤーにする必要があります。
一方、後から絵を修正するなら、線画、塗り、影などがまだ分かれている方が直しやすい場合があります。
つまり、
「一番編集しやすい制作元データ」
と、
「Live2Dへ読み込みやすく整理したPSD」
を無理に同じファイルにする必要はありません。
CLIP STUDIO公式の講座でも、元データを保存したうえでPSDを複製し、Live2D用にレイヤーを統合していく方法が紹介されています。
将来に備えるなら、この考え方が使えます。
全身を後で使うなら一枚絵の段階で腰から下も残す
今は配信画面に上半身しか映さない場合でも、将来全身Live2Dにする可能性があります。
その場合、一枚絵自体が胸や腰で切れていると、後から下半身を新しくデザインする必要があります。
同じキャラクターを将来全身まで使いたいなら、一枚絵として実際に表示するのは上半身でも、元データでは全身までデザインしておく方法があります。
反対に、
「将来も上半身しか使わない」
と決めているなら、全身を用意する必要性は下がります。
ここでも「いつか使うかもしれないから全部作る」ではなく、残したいキャラクターデザインの範囲で判断します。
背景とキャラクターは別に残す
一枚絵をプロフィール画像や告知画像として作ると、背景込みで完成させる場合があります。
将来Live2Dへ使う可能性があるなら、キャラクターと背景が完全に一体化したデータだけにしない方が扱いやすくなります。
キャラクター単体。
背景。
完成した合成画像。
を分けて残せれば、後からキャラクター部分だけをLive2D用に加工できます。
最初から背景透明の立ち絵も納品物へ含められるか確認しておく方法もあります。
表情差分を作ったなら統合せず残す
一枚絵の時点で、
笑顔。
困り顔。
怒った顔。
目を閉じた状態。
などを作っているなら、その差分も元の編集可能な状態で残します。
完成PNGだけでも参考資料にはなります。
ただし、目や口が別レイヤーで残っていれば、Live2D用素材へ使える可能性があります。
特に顔の差分を作ったあと、一つの完成画像へ統合して元のパーツを消してしまうのは避けた方がよいでしょう。
将来使うか分からないレイヤーでも、制作元ファイル側には残しておけます。
他の人にLive2D化を頼むならデータだけでなく許可も残す
イラストレーターへ依頼した一枚絵なら、編集用データを持っているだけで、別のLive2D制作者が自由に加工できるとは限りません。
Live2D化では、
第三者へ元データを渡す。
目や髪を切り分ける。
見えなかった部分を描き足す。
塗りや線を修正する。
といった作業が発生する場合があります。
将来、元絵師とは別のモデラーへ依頼する可能性があるなら、一枚絵を依頼する段階で、
「後からLive2D化してよいか」
「別の制作者へ元データを共有してよいか」
「パーツ分け・描き足しなどの加工をしてよいか」
を確認しておきます。
許可をもらったメッセージや契約内容も、元データと一緒に保管しておくと後から確認できます。
何を残すかはLive2D化の確度で変えればいい
最初からすべてをLive2D仕様にする必要はありません。
判断は次のように分けられます。
| 将来の予定 | 一枚絵を作る段階で残したいもの |
|---|---|
| Live2D化するかまだ分からない | 完成PNG+編集できる元データ+利用条件 |
| 同じキャラクターをLive2D化する可能性が高い | 上記+髪・顔・体などをある程度分けたレイヤー |
| Live2D化がほぼ決まっている | 最初から隠れ部分も描き、Live2Dを意識してパーツ分け |
| 別の人にモデリングを頼む予定 | 上記+第三者への共有・加工許可 |
| 全身Live2Dへ発展させたい | 上半身だけでなく全身の元データも残す |
最も避けたいのは、
「完成したPNGはあるけれど、元の作画データはもうない」
という状態です。
一枚絵からでもLive2D化はできますが、レイヤーがなくなれば、切り分けと描き足しを後から行うことになります。
反対に、制作時の編集可能なデータが残っていれば、Live2D化が決まってから必要な部分だけ整理できます。
最初の依頼ではこう伝えると分かりやすい
今は一枚絵だけ欲しくても、将来Live2D化するつもりなら、そのことをイラストレーターへ最初から伝えておくと話が早くなります。
たとえば、
「今回は一枚絵として使用しますが、活動を続けた場合は同じキャラクターをLive2D化する予定があります。将来パーツ分けできるよう、可能であれば統合前の編集可能な元データも残したいです。Live2D化や第三者によるパーツ分け・加筆が可能か、あわせて教えてください」
と伝えます。
さらにLive2D化の可能性が高いなら、
「顔・髪・体などを後から分けやすい状態で制作できますか」
まで相談します。
一枚絵を作る段階で必要なのは、未来のLive2Dモデルを完成させておくことではありません。
必要になったとき、完成PNGしかなくて一から作り直す状態を避けることです。
そのために残すべきなのは「PSDという名前のファイル」ではなく、キャラクターを後から編集し直せる元データです。
そしてLive2D化が具体的になるほど、レイヤー分け、隠れた部分の作画、利用許可まで一段ずつ準備を増やしていけば十分です。
出典
Live2D|PSD作成上の注意点
Live2D|素材分けについて
Live2D|イラストの加工
Live2D|原画とモデル用画像について
CLIP STUDIO PAINT|Live2D用のデータをCLIP STUDIO PAINTで作る【後編】
CLIP STUDIO PAINT|Live2Dでイラストを動かそう! キャラクターのパーツを切り分ける
nizima|nizimaに投稿できる作品の種類
文化庁|著作権契約書作成支援システム「イラストの作成」