VTuberモデルの著作権は誰のもの?|依頼したら自分のものになる?

VTuberモデルをイラストレーターやモデラーに依頼して、お金を払って完成データを受け取っても、それだけで著作権まで自分のものになるわけではありません。

原則として、作品を実際に創作した人に著作権が発生します。「制作費を払った」「納品してもらった」「自分専用に作ってもらった」というだけでは、著作権が依頼者へ自動的に移るわけではありません。(文化庁)

ただし、VTuberモデルでは話が少し複雑です。

キャラクターデザイン、立ち絵、パーツ分け、Live2Dによる動きの設定などを別々の人が担当することがあるからです。

そのため、「このVTuberモデルは自分のものか」と一括りにするより、誰がどの部分を作り、自分はその部分をどこまで使える契約になっているかを確認する方が実際の判断に役立ちます。

依頼内容を自分で考えた場合も著作権が自分に来るとは限らない

「髪は青色」「猫耳を付ける」「こんな衣装にしたい」など、自分でキャラクターの設定を考えてイラストレーターへ伝えた場合はどうでしょうか。

このような希望やモチーフを伝えただけなら、それだけで依頼者がイラストの著作者になるわけではありません。

文化庁も、依頼者がモチーフの指示や要望を出していても、それが抽象的なアイデアの提供にとどまる場合は、原則として実際に作品を創作した人が著作者になると説明しています。(文化庁)

一方、自分自身ですでにオリジナルのイラストを描いており、それを別の人にLive2Dモデルへ仕上げてもらう場合は事情が違います。

元のイラストについて自分が持っている権利と、モデリング作業で作られたデータについての利用条件を分けて考える必要があります。

イラストレーターとモデラーが別の場合も同じです。

「VTuberモデル全部の著作権」という一つの権利が単純に存在すると考えるのではなく、キャラクターデザイン、イラスト、モデルデータなど、契約の対象になっている制作物を確認した方がよいでしょう。

「商用利用可」でも著作権が自分のものとは限らない

ここは特に間違えやすいところです。

「商用利用可」と書いてあっても、それだけで著作権を譲り受けたことにはなりません。

著作権を制作者に残したまま、VTuber活動に必要な範囲だけ使うことを認めてもらう「利用許諾」という方法があります。

実際のVTuber制作サービスでも、著作権は制作者に残したまま、YouTubeなどでの配信、広告収入、投げ銭などを認めている例があります。(Kraz | Live2D制作)

ここで注意したいのが、「商用利用」の範囲も制作者によって違うことです。

現在公開されている制作サービスには、広告収入や投げ銭は認めるものの、グッズ販売は別扱いとする条件もあります。一方で、グッズ制作まで認めるサービスもあります。(ココナラ)

つまり、

「商用利用可だから何でもできる」

とは判断できません。

何ができるのかを、利用規約や見積もり時の取り決めまで読んで確認する必要があります。

著作権をもらわなくてもVTuber活動はできる

VTuberとして配信するために、必ず著作権そのものを買い取らなければならないわけではありません。

たとえば、

・YouTubeなどで配信する
・広告収入を得る
・投げ銭を受け取る
・SNSでモデルを使う

といった活動が利用許諾の範囲に明記されていれば、著作権が制作者に残っていても、その条件の範囲では活動できます。

著作権譲渡が必要になるかどうかは、「著作権を持っている方が安心そうだから」ではなく、今後何をしたいかから考えた方が分かりやすくなります。

今後したいこと確認したい権利・条件
配信・広告・投げ銭だけ配信・収益化の利用許諾
グッズを販売したいグッズ制作・販売が許可されているか
新しい衣装を追加したい改変や別衣装制作が許可されているか
別の絵師・モデラーへ依頼したい第三者による改変・制作を認めているか
将来、法人や事務所へ権利を移したい利用権の譲渡・再許諾が可能か
自分で広く管理したい著作権譲渡の範囲を確認

特に新衣装や別ポーズは注意が必要です。

文化庁は、同じキャラクターについて異なるポーズや服装をデザインする行為は、著作権上の「翻案」に当たることが多く、著作権者の許諾が必要になると説明しています。(文化庁)

「今のモデルを使って配信できる」という契約と、「別の人に新衣装を描いてもらえる」という契約は同じではありません。

後から別の絵師やモデラーへ頼みたいなら特に確認する

個人VTuberでは、活動を続けるうちに制作者を変更したくなることがあります。

新しい衣装が欲しくなった。

現在のモデルを調整してほしい。

別のモデラーに動きを追加してほしい。

こうしたとき、著作権が元の制作者に残っており、第三者による改変が認められていなければ、勝手に別のクリエイターへ渡して変更できないことがあります。

実際に、著作権譲渡をしていないモデルについて、他のクリエイターによるリメイクや改変を禁止している制作者も確認できます。(Kraz | Live2D制作)

そのため、長く同じキャラクターで活動する予定なら、依頼時点で「別のクリエイターによる衣装追加やモデル調整が可能か」まで確認しておいた方が安全です。

著作権を全部譲り受けなくても、第三者への改変依頼まで認める利用許諾を結べるのであれば、それで目的を満たせる場合もあります。

「著作権譲渡あり」と書いてあれば完全に自由とは限らない

依頼ページに「著作権譲渡」と書かれていても、それだけで確認を終わらせない方がよいでしょう。

まず確認したいのは、何の著作権が譲渡されるのかです。

キャラクターデザインだけなのか。

立ち絵も含むのか。

Live2Dモデルの制作物も含むのか。

ロゴや小さく描いたデフォルメキャラクターなど、同時に依頼した別の制作物まで含むのか。

「VTuberモデル一式」と考えていた依頼者と、特定の制作物だけを想定していた制作者で認識が違えば、後から問題になります。

さらに、著作権を広く譲り受けたい場合は、著作権法27条・28条に関する権利が含まれているかも確認対象です。

文化庁によると、これらはキャラクターを変更した作品を作ったり、その変更後の作品を利用したりすることに関係する権利で、譲渡契約に明記されていなければ元の著作権者に残ると推定されます。(文化庁)

契約書で「すべての著作権を譲渡」とだけ書かれている場合と、「著作権法27条及び28条に定める権利を含む」と書かれている場合では意味が変わります。

著作者人格権は著作権とは別に残る

もう一つ確認したいのが「著作者人格権」です。

これは、作者名をどう表示するか、作品を本人の意に反して変更されないことなどに関する、作者本人に結び付いた権利です。

著作者人格権そのものは他人へ譲渡できません。

そのため、著作権を依頼者へ譲渡した場合でも、著作者人格権は原則として作者に残ります。(文化庁)

そこで契約では、「著作者人格権を行使しない」という取り決めを入れる場合があります。

将来、衣装変更、色変更、モデル修正などを広く行う予定なら、著作権譲渡の有無だけでなく、この点も確認対象になります。

ただし、著作者人格権の不行使を求めれば必ず認めてもらえるわけではありません。制作者側が受け入れない場合もあるため、依頼前に条件を合わせることが重要です。

元データを受け取ることと著作権をもらうことも別

完成したモデルを受け取ったからといって、編集に使う元データまで受け取れるとは限りません。

実際のLive2D制作サービスでも、配信用の完成モデルデータは渡す一方、編集用のプロジェクトファイルは通常納品しないという規約があります。(Kraz | Live2D制作)

逆に、著作権譲渡を行った場合に編集用データまで納品するというサービスもあります。(ココナラ)

これは著作権とは別の確認事項です。

「著作権をもらったから編集用データも当然もらえる」

「編集用データをもらったから著作権も自分にある」

のどちらも決めつけない方がよいでしょう。

著作権譲渡が必要かは将来の使い方から決める

配信や広告収入、投げ銭が目的で、その利用が明確に許可されているのであれば、著作権を制作者に残したまま活動できるケースがあります。

一方、

別のクリエイターへモデルを渡して修正したい。

衣装や髪型を自由に増やしたい。

多数のグッズへ展開したい。

法人化した後も会社で使いたい。

将来モデルや事業を第三者へ引き継ぐ可能性がある。

こうした使い方まで考えるなら、通常の配信利用だけを認める契約では足りなくなる可能性があります。

その場合は、単に「著作権譲渡できますか」と聞くのではなく、自分が将来行う予定の利用を伝え、それができる契約になっているかを確認することが重要です。

著作権譲渡でなければならないとは限りません。

必要な利用を十分広く認めてもらえるのであれば、利用許諾で解決できる場合もあります。

反対に、本当に自由度を高くしたいのであれば、譲渡対象となる制作物、改変に関する権利、著作者人格権の扱い、第三者への依頼、編集用データの納品まで確認しておく必要があります。

依頼前は「著作権は誰?」ではなく「将来何ができる?」を確認する

VTuberモデルを依頼した場合、代金を払っただけで著作権が自動的に自分のものになるわけではありません。

しかし、だからといって「著作権を譲ってもらわなければVTuber活動ができない」という意味でもありません。

重要なのは、自分がこれから行いたいことです。

配信だけなのか。

グッズも作るのか。

別のクリエイターへ新衣装やモデル調整を頼むのか。

将来は法人や事務所で使う可能性があるのか。

ここまで決めれば、必要なのが通常の利用許諾なのか、より広い利用許諾なのか、著作権譲渡なのかが見えてきます。

依頼時には「著作権は誰のものですか」だけで終わらせず、自分が将来したい使い方までできる契約かを確認することが、後から困らないための一番重要なポイントです。

なお、著作権法は全国共通の法律であり、この点に地域ごとの違いはありません。個別の契約文言によって結論が変わる場合があるため、高額なモデルや企業活動に使用するモデルでは、必要に応じて知的財産権に詳しい専門家へ契約内容を確認してもらう方法もあります。

出典

[文化庁|文化芸術活動に関する法的問題についてよくあるご質問] 文化庁の資料を見る

[文化庁|誰でもできる著作権契約マニュアル] 文化庁の資料を見る

[e-Gov法令検索|著作権法] 著作権法を見る

[SKIMA|VTuber制作を個人でカンタン依頼!] SKIMAの解説を見る

[Kraz|Live2D制作 利用規約] 利用規約を見る

[ココナラ|VTuberキャラデザ~モデリング全行程制作サービス] 掲載内容を見る