VTuberモデルを作ってくれたモデラーとは別の人に、動きの修正や新しい表情の追加を頼める場合はあります。
ただし、「自分がお金を払って作ってもらったモデルだから、誰にデータを渡してもいい」とは限りません。
確認したいのは、主に次の3点です。
元制作者からモデルの改変を認められているか。
別のクリエイターへデータを渡して作業してもらうことまで認められているか。
そして、実際に編集できる元データを持っているかです。
この3つを分けて確認すると、自分のモデルを別の人へ頼めるか判断しやすくなります。
「自分が使える」と「別の人に直してもらえる」は別
VTuberモデルを依頼すると、通常は配信や動画などでモデルを使うことについて許可を受けます。
しかし、その許可があるからといって、第三者のモデラーへデータを渡して改変してもらうことまで自動的に認められるわけではありません。
著作物の利用許諾は、契約で決められた利用方法や条件の範囲で使えるものです。
さらに、自分が許可を受けた著作物を第三者にも利用させたい場合には、そのことまで認められている必要があります。(文化庁)
VTuberモデルなら、
「本人が配信に使ってよい」
という許可と、
「別のモデラーにデータを渡して修正させてよい」
という許可を分けて考える必要があります。
まず「改変」と「第三者への共有」の両方を見る
依頼時の利用規約、契約書、見積書、メールやメッセージを確認します。
探したいのは、
「改変可」
「他クリエイターへの依頼可」
「第三者へのデータ共有可」
「再委託可」
などの記載です。
「改変可」と書かれていても、自分で変更することだけを想定しており、モデルデータを別の人へ渡すことは禁止されている可能性があります。
逆に、別のモデラーによる修正まで明確に認められているモデルもあります。
そのため、「改変OK」という一語だけではなく、誰が改変してよいのかまで確認します。
別のモデラーが直すには編集用のcmo3が必要になる
Live2Dモデルでは、似た名前のファイルが複数あります。
初心者が特に間違えやすいのが「cmo3」と「moc3」です。
cmo3は、Live2D Cubism Editorでモデルを制作・編集するときに使うプロジェクトファイルです。
一方、moc3は完成したモデルを配信アプリなどで動かすために書き出したデータです。(Live2D)
普段VTube Studioなどで使っているモデル一式を持っていても、cmo3を持っているとは限りません。
実際のVTuber制作サービスでも、
完成モデルのmoc3などは納品する
編集可能なcmo3は納品しない
という規約があります。(Kraz | Live2D制作)
他のモデラーが制作したモデルの修正サービスでも、cmo3を必須としている例があります。(グラップサイド合同会社)
つまり、「モデルのフォルダを持っているから別の人が直せる」とは限りません。
cmo3を持っていないなら、まず元制作者へ確認する
別のモデラーへ相談する前に、自分の納品データを確認します。
cmo3がなければ、元制作者へ、
「別のモデラーに修正を依頼したいため、編集用のcmo3を提供してもらえるか」
と確認します。
ここで注意したいのは、cmo3が最初の制作料金に含まれているとは限らないことです。
実際の制作規約には、cmo3を基本的に渡さない例や、別料金で提供する例があります。(Kraz | Live2D制作)
そのため、「納品物なのだから無料でもらえるはず」とは決めつけない方がよいでしょう。
元制作者との契約で、編集用データが納品対象になっているかを確認します。
動きだけ直すならモデラー側の許可が中心になる
たとえば、
口の開き方がおかしい
顔を横に向けたときに髪が崩れる
揺れを調整したい
可動域を変更したい
といった、現在のモデルの動きに関する修正です。
この場合は、主にLive2Dモデリング部分の改変が問題になります。
元モデラーが別のモデラーによる改変を許可しており、必要なcmo3を適法に渡せるなら、別のモデラーが対応できる可能性があります。
実際に他者制作モデルの修正を受け付けるサービスでも、「元モデラーからの改変許可」と「cmo3の提出」を条件にしている例があります。(Google Sites)
反対に、元制作者の規約で他クリエイターによる改変を禁止しているなら、cmo3を偶然持っていたとしても、それだけで自由に修正できるとは判断できません。
新しい衣装やパーツを追加するならイラスト側も確認する
問題が一段増えるのが、新しい絵が必要になる修正です。
たとえば、
新衣装を追加する
新しい腕のポーズを追加する
髪型を変える
帽子や小物を追加する
描かれていなかった体の部分を書き足す
といった場合です。
これはLive2Dの動きを変更するだけではなく、元のイラストそのものに手を加えることになります。
イラストレーターとモデラーが別なら、モデラーの許可だけでは足りない場合があります。
実際のLive2D制作者の案内でも、持ち込みイラストに新しいパーツを追加する場合は、元イラストレーターへの許可が必要とされています。(Google Sites)
そのため、
イラストはAさん
Live2DモデリングはBさん
修正を頼みたいのはCさん
という場合は、AさんとBさん、それぞれが作った部分について条件を確認します。
PSDを渡してよいかも別に確認する
新しい衣装やパーツを作るためには、元イラストの編集用データが必要になることがあります。
よく使われるのがPSDという、イラストの各パーツを分けた状態で保存できるファイルです。
ここでも、「PSDを持っている」と「第三者に渡してよい」は別です。
実際の制作規約には、PSDを含むイラストデータを許可なく第三者へ渡したり、別の制作者による改変に使ったりすることを禁止している例があります。(Fuyuno Studio)
したがって、新しいモデラーやイラストレーターへ、
cmo3
PSD
元のイラストデータ
などを送る前に、そのデータを第三者へ提供してよい条件になっているか確認します。
著作権を買い取らないと別の人へ頼めないとは限らない
別のモデラーへ頼みたい場合、「著作権を全部買い取る必要がある」と考える人もいるかもしれません。
しかし、必ずしもそうではありません。
著作権を元制作者に残したままでも、
モデルを改変してよい
指定した別のクリエイターへデータを提供してよい
そのクリエイターが修正作業をしてよい
という利用許諾を受ける方法があります。
文化庁の著作権契約マニュアルでも、利用者が第三者にも著作物を利用させる必要があるなら、その内容を契約で定める方法が示されています。(文化庁)
一方、制作者によっては「他クリエイターによる改変を認めるのは著作権譲渡後だけ」という契約にしている場合もあります。(Kraz | Live2D制作)
必要なのは、「著作権譲渡」という言葉だけを見ることではありません。
自分の契約で、別の人による修正が認められているかを見ることです。
著作権を譲渡されていても契約内容は確認する
著作権を譲り受けている場合は、第三者へ修正を依頼できる範囲は広くなります。
ただし、「著作権譲渡済み」という一言だけで判断しない方がよいでしょう。
文化庁は、著作権のうち、元作品を変更して別作品を作ることなどに関係する著作権法27条・28条の権利について、譲渡契約で明記されていなければ元の権利者に残ると推定されると説明しています。(文化庁)
また、著作者には、本人の意に反して作品を変更されないための「同一性保持権」などの著作者人格権があります。
著作者人格権そのものは譲渡できません。(文化庁)
したがって、大幅なデザイン変更やリメイクを予定しているなら、著作権譲渡の有無だけでなく、改変に関する契約条件も確認します。
元制作者と連絡が取れなくても自由に直せるわけではない
何年も活動していると、
元モデラーが活動をやめた
SNSアカウントが消えた
連絡しても返事がない
ということもあります。
しかし、連絡が取れなくなっただけで、その人の著作権や契約上の制限が自動的になくなるわけではありません。
実際に他者制作モデルのリニューアルを扱う制作者でも、単に元制作者と連絡が取れないだけでは改変依頼を受けないという規約があります。(Kraz | Live2D制作)
「返事がないから許可されたものとして進める」という判断は避けた方がよいでしょう。
「少し直すだけ」でもデータを勝手に渡さない
別のモデラーへ頼みたい理由が、
口だけ少し直してほしい
髪の揺れだけ変えてほしい
一つだけ表情を増やしたい
といった小さな修正でも、考え方は同じです。
修正の規模が小さいから、第三者へのデータ共有が自動的に許されるわけではありません。
元制作者との契約で、
誰がデータを使えるか
誰が改変できるか
どこまで改変できるか
を確認します。
修正内容が小さいほど、「これくらいなら大丈夫だろう」と判断しやすい部分なので注意が必要です。
VTube Studioの設定変更とモデル本体の改変は分ける
もう一つ分けて考えたいのが、配信ソフト側の設定変更です。
VTube Studioなどで、
顔の動きへの反応を調整する
パラメータの入力値を変更する
キー操作を設定する
といった作業だけなら、Live2Dのcmo3そのものを編集しない場合があります。
実際に、VTube Studio側のパラメータ調整を自由に認めている制作者もいます。(Fuyuno Studio)
ただし、その設定作業を別の人へ頼むためにモデルデータ一式を渡す場合は、第三者へのデータ共有規約が別に関係します。
「モデルそのものは改変しないから何でも渡してよい」とはせず、データ共有についても確認します。
別の人へ頼む前は修正内容まで書いて許可を取る
元制作者へ確認するときは、
「別の人に修正してもらっていいですか」
だけでは少し曖昧です。
たとえば、
「別のLive2Dモデラーに、口の動きと髪の揺れの修正を依頼したいと考えています。そのためcmo3とモデルデータ一式を依頼先へ共有しても問題ないでしょうか。イラスト自体の変更は行いません」
というように、
誰に渡すのか
何のデータを渡すのか
何を変更するのか
まで伝えます。
新しい衣装を追加するなら、PSDの共有やイラストの加筆まで含めて確認します。
許可を得た場合は、後から確認できるよう、メールやメッセージなど記録が残る形にしておくと判断しやすくなります。
別の人に修正してもらえるかは3段階で判断する
VTuberモデルを別のモデラーに修正してもらえるかは、「モデルを購入したか」「制作費を払ったか」だけでは決まりません。
最初に、別のクリエイターによる改変が認められているかを確認します。
次に、cmo3やPSDなど必要なデータを第三者へ渡してよいかを確認します。
そして、実際に編集できるデータを持っているかを確認します。
動きだけの修正なら、主にモデリング側の許諾とcmo3が問題になります。
新衣装や新しいパーツまで作るなら、元イラストレーターの権利とPSDの扱いも確認対象になります。
この3つが確認できれば、別の人へ修正を頼めるかをかなり明確に判断できます。
著作権法自体は全国共通なので、この判断に都道府県ごとの違いはありません。
出典
文化庁|誰でもできる著作権契約マニュアル 第1章1(2)
文化庁|文化芸術活動に関する法的問題についてよくあるご質問
e-Gov法令検索|著作権法
株式会社Live2D|ファイルの種類と拡張子
Kraz|利用規約
Fuyuno Studio|利用規約
Illustration & Live2D Creation|FAQ
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