Live2Dモデルの動きが不自然だからといって、すぐモデリングを直せばよいとは限りません。
逆に、「元絵が悪いから描き直し」と決める必要もありません。
まず確認したいのは、不自然さがどの時点で現れるかです。
止まった状態から必要な絵が足りないなら、元絵側。
Live2D Cubismの中でパラメータを動かしたときにだけ崩れるなら、モデリング側。
Cubismでは自然なのにVTube Studioなどで実際に顔を追従させたときだけおかしいなら、配信ソフト側の設定を先に確認します。
「見た目がおかしい」という一つの症状でも、直す場所は違います。
まずCubismの中だけで動かしてみる
原因を分けるときに、最初からWebカメラで動かさない方が分かりやすくなります。
Live2D Cubism Editorを開き、顔の左右、上下、口、目、体、髪などのパラメータを一つずつ手で動かします。
ここで既に不自然なら、VTube Studioなどの顔認識は関係ありません。
元絵かモデリングのどちらかを調べます。
反対に、Cubismの中ではきれいに動くのに、配信ソフトへ持っていくと急に口が開きすぎる、顔が振れすぎる、動きがガクガクするのであれば、モデルそのものを修正する前にトラッキング設定を確認します。
この切り分けを最初に行うだけで、必要のない描き直しを避けられます。
止まっている状態から足りないものがあるなら元絵側
元絵側を直した方がよい典型例は、「動いた先に表示する絵そのものがない」場合です。
たとえば前髪を横へ動かしたところ、後ろにあるはずの額が描かれておらず空白が出る。
顔を傾けたら、髪に隠れていた輪郭が途中で切れている。
腕を動かしたら、その後ろにあるはずの服がない。
口を開けたいのに、閉じた口しか描かれておらず、口の中の素材がない。
こうした問題は、デフォーマを何度調整しても、本来あるべき絵を新しく作ることはできません。
モデリングで動きを小さくして隠すことはできます。
しかし、それでは希望していた可動範囲そのものを狭めることになります。
必要な可動域を残したいなら、隠れていた部分を描き足すなど、元絵を修正する方が本来の解決になります。
「分かれていないから動かせない」場合も元絵を見直す
一枚絵の状態では問題なく見えていても、Live2Dで別々に動かしたいものが一体化している場合があります。
たとえば、
前髪と顔が同じ画像になっている。
腕と胴体が一体になっている。
リボンと服が分かれていない。
瞳と白目が一枚になっている。
こうした状態で、それぞれ別の動きを付けようとすると限界があります。
後から切り分けられる場合もありますが、隠れている場所の描き足しが必要になることがあります。
「モデラーが頑張れば何とかなる」と考えるより、欲しい動きを作るために必要な素材がそろっているかを先に確認します。
必要な部品自体が存在しないなら、元絵側へ戻る判断です。
正面は自然なのに横を向くと顔が崩れるならモデリング側を見る
元絵の正面顔はきれいに見える。
必要な目・鼻・口・輪郭・髪もそろっている。
それなのに顔を横へ向けると、
目の位置が急にずれる。
片方の目が大きすぎる。
口が横へ滑る。
鼻だけ取り残される。
輪郭がへこむ。
といった症状が出るなら、モデリング側を先に確認します。
Live2Dは3Dモデルを実際に回転させているわけではありません。
正面のイラストを変形させ、右や左を向いているように見せています。
そのため、顔を横へ向けるときには、近い側を大きく、遠い側を狭くするなど、立体感を意識して各部品を変形させます。
この変形のバランスがおかしければ、原画が正常でも動いた瞬間に顔が崩れます。
この場合、原画を描き直す前に、顔の左右・上下のキーフォームを修正します。
斜めだけ変になるなら「四隅」を確認する
左右は自然。
上下も自然。
なのに、右上、左下など斜め方向へ顔を動かしたときだけおかしくなる場合があります。
Live2Dでは、横方向と縦方向を組み合わせた中間の形も作ります。
たとえば顔の左右と上下をそれぞれ3段階で設定すると、組み合わせとして9方向の状態があります。
左右と上下だけを見て問題ないと思っていても、斜め位置では目や輪郭の変形が不自然になることがあります。
この場合も、元絵を描き直す前にモデリング側の斜め方向を確認します。
特定の角度だけ崩れるなら、その角度の形を調整する方が先です。
顔全体についてこない部品があるなら親子関係を見る
顔を右へ向けると、目と口は付いてくるのにアクセサリーだけ残る。
身体を傾けると、服は動くのにリボンだけずれる。
こうした症状では、デフォーマの親子関係を確認します。
デフォーマとは、Live2Dで部品をまとめて動かしたり変形したりするための枠のようなものです。
親のデフォーマを動かすと、その中に入っている子の部品も一緒についてきます。
そのため、本来顔全体と一緒に動く部品が別の階層に入っていれば、その部品だけ取り残されることがあります。
逆に、動かしたくないものまで同じ親へ入っていると、不要な動きを受ける場合があります。
「一つの部品だけ変な方向へ動く」なら、その部品の形を描き直す前に、どのデフォーマの中に入っているかを確認します。
口だけ不自然なら元絵より先に「開き方」を見る
口は、「元絵が変なのか、モデリングが変なのか」が分かりにくい場所です。
閉じた状態の口そのものがおかしいなら、元絵を確認します。
一方、
閉じているときは自然。
少し開くと急に大きくなる。
笑顔になる途中だけ形がつぶれる。
「あ」から「い」へ変わる途中が不自然。
という場合は、モデリング側を先に確認します。
Live2Dでは、口の開閉と口の形を組み合わせてさまざまな表情を作れます。
端の状態だけきれいでも、その途中を実際に動かしたとき不自然になることがあります。
口の場合は完成した一枚の形ではなく、閉じるところから大きく開くところまで連続して確認します。
途中だけ崩れるなら、元絵を描き直すより、途中の形を調整する方が解決に近づきます。
髪が頭から外れるなら物理演算だけを触らない
髪が不自然に揺れると、
「物理演算の数字を変えよう」
と考えがちです。
確かに揺れる速さや反応の強さは物理演算で調整できます。
しかし、髪の根元そのものが頭からずれる場合は、物理演算だけではなくモデリング側を確認します。
顔が右を向いた状態。
左を向いた状態。
上や下を向いた状態。
それぞれで、髪の根元が正しい場所に付いているかを見ます。
その基本位置がおかしいまま物理演算を付けると、間違った位置を基準にさらに髪が揺れるため、不自然さが目立ちます。
まず「揺れがない状態で髪が正しい位置にあるか」を確認し、そのあと物理演算を調整します。
髪の位置は正しいが揺れ方だけ変なら物理演算を直す
逆に、
髪の根元は正常。
顔を左右へ動かしても髪の位置は正常。
しかし動いたあとに髪がいつまでも揺れる。
跳ね返りが大きすぎる。
重そうな髪なのに速く揺れすぎる。
という場合は、物理演算側です。
Live2Dでは、どの動きを揺れの入力にするか、入力の影響をどれくらい受けるか、揺れの長さや反応などを設定できます。
同じ髪のモデルでも、この設定によって揺れ方は変わります。
この場合、元絵を描き直しても揺れ方は改善しません。
「形が変」なのか「動き方が変」なのかを分けることが重要です。
変形すると線や塗りが崩れるなら元絵とモデリングの両方を見る
少し判断が難しいのが、
顔を曲げると線がガタガタになる。
髪を揺らすと塗りが伸びる。
衣装を変形すると模様がつぶれる。
といった症状です。
この場合は、元絵かモデリングのどちらか一方とは限りません。
まずメッシュの作り方を確認します。
メッシュとは、イラストを変形させるために画像上へ設定する細かな網のようなものです。
変形させたい形に合っていないメッシュなら、動いたときに線や塗りが不自然に伸びることがあります。
一方、元絵そのものに動かすための余白が少なかったり、細かな模様が変形に向かない位置へ描かれていたりすれば、モデリングだけではきれいに保ちにくいこともあります。
モデリングを調整してもどうしても絵柄が崩れる場合に、元絵の修正へ戻ります。
「可動域を狭くすれば直る」は元絵の限界を隠している場合もある
顔を大きく横へ向けると崩れるので、可動域を半分にしたらきれいになった。
この場合、「モデリングを直せた」とは限りません。
本来欲しかった可動域まで動かせない原因が、
隠れた部分の作画不足。
パーツ分け不足。
元絵の構図。
にある可能性があります。
逆に、元絵に必要な素材がすべてそろっているのに大きく動かすと崩れるなら、モデリング側で改善できる余地があります。
判断するときは、
「狭くしたら見えなくなった」
ではなく、
「希望している可動域を保ったまま直せるか」
を見ます。
可動域を削らないと成立しないなら、元絵側まで戻る必要があるかを検討します。
元絵を直したらモデリングを全部やり直すとは限らない
モデリング後に、
「やっぱり原画を直さないと無理そう」
と分かった場合でも、必ずモデルを一から作り直すわけではありません。
Live2D Cubismには、修正したPSDを再インポートし、既存モデルの原画を差し替える仕組みがあります。
色を修正する。
形を少し直す。
新しい部品を追加する。
といった変更をモデルへ反映できます。
ただし、元絵の形を大きく変更すると、既存のメッシュから画像がはみ出し、メッシュの修正が必要になることがあります。
さらに、すでに動きを設定したアートメッシュのメッシュ自体を変更すると、作ってあるキーフォームへ影響する可能性があります。
そのため、
「あとで原画は簡単に差し替えられるから、とりあえずモデリングを進める」
とも考えない方がよいでしょう。
大きな描き直しが必要と分かったら、動きを大量に作る前に元絵へ戻る方が手戻りを抑えやすくなります。
Cubismでは正常なのに配信すると変なら元絵を直さない
ここが、元絵とモデリングの二択だけでは判断できないところです。
Cubismの中で顔を左右へ動かす。
口を開閉する。
目を閉じる。
髪を揺らす。
この状態ではすべて自然なのに、VTube Studioへ読み込んだ途端、
顔を少し動かしただけでモデルが大きく振れる。
口がほとんど開かない。
逆に口が開きすぎる。
動きが細かく震える。
反応を滑らかにすると遅れてついてくる。
ということがあります。
VTube Studioでは、カメラが取得した顔の動きを「入力」、Live2Dモデルのパラメータを「出力」として対応させます。
どの入力範囲をモデルのどこまでの動きへ割り当てるかを変更できます。
また、スムージングを強くすれば細かな揺れを抑えられますが、その代わり反応に遅れが生じます。
このケースでは、まず配信ソフトの入力・出力範囲やスムージングを確認します。
Cubismで正常なのに、元絵やモデリングを直し始める必要はありません。
一番早いのは「どの段階から変になるか」を記録すること
自分で制作している場合も、モデラーへ修正を依頼する場合も、
「なんとなく動きが変です」
だけでは原因を見つけにくくなります。
たとえば、
「正面は正常。顔を右へ向けたときだけ右目が鼻側へ寄りすぎる」
「髪は静止状態では正常。物理演算を有効にしたときだけ根元まで大きく動く」
「Cubismで口開閉0〜1を動かすと自然。VTube Studioでだけ口が開きすぎる」
というように伝えます。
どこから症状が始まるかが分かれば、修正場所もかなり絞れます。
判断は次のように整理できます。
| 症状 | 先に確認する場所 |
|---|---|
| 動かす前から絵に不足がある | 元絵 |
| 髪などを動かすと隠れていた空白が出る | 元絵の描き足し |
| 独立して動かしたい部品が分かれていない | 元絵・パーツ分け |
| 正面は正常だが横・上・下で顔が崩れる | モデリング |
| 斜め方向だけ崩れる | モデリングの中間形 |
| 一部の部品だけ顔や体についてこない | デフォーマの親子関係 |
| 口の途中形だけ不自然 | 口のモデリング |
| 髪の根元が顔の向きでずれる | 髪のモデリング |
| 髪の位置は正常だが揺れ方が不自然 | 物理演算 |
| Cubismは自然、配信ソフトでだけ変 | トラッキング設定 |
Live2Dの動きが不自然なとき、元絵とモデリングを感覚だけで行き来すると、大きな手戻りになりやすくなります。
最初に見るのは、「どちらが悪いか」ではありません。
不自然さが、どの段階から発生するかです。
止まった素材の段階ですでに不足しているなら元絵へ戻る。
素材は足りていて、動かしたときだけ形が崩れるならモデリングを直す。
モデル内では自然なのに実際の顔へ連動したときだけおかしいなら、トラッキング設定を見る。
この順番なら、元絵を描き直したのに直らない、モデリングを何度修正しても直らない、という遠回りを減らせます。
出典
Live2D|キーフォーム(X,Yの動きをつける)
Live2D|親子関係の仕組み
Live2D|親子関係の組み合わせ
Live2D|素材分けについて
Live2D|PSDの再インポート
Live2D|物理演算について
Live2D|物理演算の設定方法
DenchiSoft|VTS Model Settings(VTube Studioのモデル設定に関する公式資料)