VTuberモデルを依頼するとき、「完成したモデルデータを納品します」と書かれていても、何が入っているかは制作者によって違います。
今すぐVTube Studioなどで配信するだけなら、配信用に書き出されたモデルデータ一式があれば使える場合があります。
しかし、将来モデルを修正したり、別のモデラーへ依頼したり、新しい衣装やパーツを追加したりするなら、それだけでは足りないことがあります。
特に確認しておきたいのが、
「moc3」と「cmo3」
「配信用データ」と「元データ」
の違いです。
名前がよく似ていますが、役割はかなり違います。
moc3とcmo3は名前が似ていても役割が違う
Live2Dモデルで最も間違えやすいのが、この2つです。
moc3は、完成したLive2DモデルをVTube Studioなどのアプリで動かすために使うデータです。
一方、cmo3は、Live2D Cubism Editorでモデルそのものを編集するための制作データです。
簡単に言えば、
moc3=使うためのデータ
cmo3=直すためのデータ
と考えると分かりやすいでしょう。
VTuberとして配信するだけなら、通常はcmo3を直接使いません。
しかし、後から顔の動きを大きく直したり、別のモデラーにモデルを調整してもらったりするときには、cmo3が必要になる場合があります。
そのため、「moc3をもらったから元データも全部もらった」とは考えない方がよいでしょう。
配信するにはmoc3だけあればよいわけではない
配信用データについても、「moc3ファイル1個だけもらえば終わり」ではありません。
Live2DモデルをVTube Studioなどで動かすときは、複数のファイルが一つのモデルとして使われます。
代表的なものは次のようなデータです。
| データ | 主な役割 |
|---|---|
| moc3 | 動かすためのLive2Dモデル本体 |
| model3.json | モデル本体やテクスチャなどを結び付ける設定 |
| PNG | モデル表面に表示する画像 |
| physics3.json | 髪や服などの揺れに使う物理演算設定 |
| exp3.json | 表情切り替えがある場合のデータ |
| motion3.json | モーションがある場合のデータ |
すべてのVTuberモデルに、この表のファイルが全部必要という意味ではありません。
モデルにどの機能が入っているかによって変わります。
そのため依頼時は、「moc3を納品してください」とファイル名一つを指定するより、
「VTube Studioですぐ動作確認できるモデルデータ一式を納品してもらえるか」
と確認した方が実用的です。
「VTube Studio対応」でも設定済みとは限らない
もう一つ分けたいのが、Live2DのモデルデータとVTube Studio側の設定です。
VTube Studioでは、顔の動きをどのLive2Dパラメータへ反映するか、ホットキーでどの表情を出すかなどの設定を行います。
こうしたモデルごとの設定は、VTube Studio側の設定ファイルに保存されます。
つまり、
「VTube Studioで読み込めるデータ」
と、
「制作者がトラッキングやホットキーまで調整した状態のデータ」
は同じとは限りません。
納品後すぐ使いたいなら、
VTube Studioへの導入まで設定済みなのか
自分で初期設定する必要があるのか
表情切り替えのキー設定まで入っているのか
を確認します。
特にパソコン操作やLive2Dの知識に自信がない人は、「必要なファイル名」より「納品後に何をすれば配信できるのか」まで聞いた方が分かりやすいでしょう。
cmo3は標準納品とは限らない
ここが依頼前に確認しておきたい重要な部分です。
実際のVTuberモデル制作サービスを見ると、
配信用データは納品する
cmo3は納品しない
必要なら追加料金で納品する
といった条件が珍しくありません。
つまり、制作費を払ったからcmo3まで当然にもらえるとは限りません。
現在のモデラーに今後もすべての修正を頼む予定なら、cmo3を自分で持たなくても困らない場合があります。
一方、
将来ほかのモデラーへ変更する可能性がある
数年後に大きく作り直したい
活動規模が大きくなったら別会社へ制作を依頼したい
と考えているなら、cmo3の扱いは依頼前に確認しておいた方がよいでしょう。
PSDはcmo3とは別の「イラスト側の元データ」
cmo3がLive2Dモデリング側の編集データなら、PSDは主にイラスト側で使われるデータです。
VTuber用のイラストでは、目、口、髪、腕、服などを別々のパーツとして描き、それをLive2Dへ読み込んで動かします。
そのパーツ分けされたイラストによく使われるのがPSD形式です。
そのため、
目の形そのものを描き直したい
新しい服の絵を追加したい
腕や髪など新しいパーツを描き足したい
といった変更では、Live2Dのcmo3だけでなく、元のイラストについてのデータや権利関係も確認する必要があります。
逆に、動きの調整だけなら、イラストのPSDまで必ず必要になるとは限りません。
「将来何を直したいか」によって、必要な元データが違います。
PSDをもらえるサービスと、もらえないサービスがある
イラストからLive2Dまで一括依頼した場合でも、PSDが必ず納品されるとは限りません。
実際の制作サービスには、
立ち絵PNGとPSDを納品する
PSDは納品しない
PSDとcmo3を追加オプションにする
といった違いがあります。
そのため、「イラスト込みプランだから元絵のPSDも当然含まれる」と判断しない方がよいでしょう。
依頼前に納品物一覧を見るか、
「パーツ分け済みPSDは納品されますか」
と確認します。
今の制作者へ頼み続けるなら元データがなくても困らない場合がある
cmo3やPSDを絶対に受け取らなければいけないわけではありません。
現在の制作者が活動を続けていて、
衣装追加
表情追加
動きの修正
モデルのアップデート
まで今後も依頼する予定なら、元データを制作者側で保管してもらう形でも運用できます。
この場合は、
元データをどの程度の期間保管してもらえるか
数年後でも修正を依頼できるか
追加修正の料金はどうなるか
制作者が活動を終了した場合はどうなるか
まで確認しておくと判断しやすくなります。
「cmo3をもらわない=失敗」ではありません。
重要なのは、将来の修正を誰に任せるつもりなのかです。
別のモデラーへ移る可能性があるなら話が変わる
活動を続けていると、
現在のモデラーが受付を終了した
もっと大きくモデルを作り直したくなった
新衣装だけ別のモデラーへ頼みたい
ということがあります。
このとき、配信用のmoc3一式しか持っていないと、新しいモデラーが元のLive2Dモデルをそのまま編集できない場合があります。
そこで重要になるのがcmo3です。
ただし、cmo3を持っていれば無条件で誰にでも渡して編集してもらえるわけではありません。
別の制作者による改変や、元データの第三者への提供が契約上認められているかも確認する必要があります。
つまり、
「cmo3を受け取ること」
と、
「そのcmo3を別のモデラーへ渡して修正してもらえること」
も別問題です。
イラストレーターとモデラーが別なら納品物も分けて考える
VTuber制作では、
イラストレーターがPSDを作る
モデラーがそのPSDを受け取ってLive2D化する
という分業もよくあります。
この場合は「モデル一式」という一つの納品物だけで考えない方が分かりやすくなります。
イラストレーターから何を受け取るのか。
モデラーから何を受け取るのか。
それぞれ確認します。
たとえば、
イラストレーターからパーツ分け済みPSD
モデラーからVTube Studio用モデル一式
という納品になることがあります。
一方、PSDは依頼者を経由せずイラストレーターからモデラーへ直接渡され、依頼者には最終モデルだけが届く場合も考えられます。
将来自分でもPSDを必要とする可能性があるなら、最終的に誰が保有する契約なのか確認しておきましょう。
元データをもらっても著作権まで自分のものになるわけではない
cmo3やPSDを受け取った場合でも、それだけで著作権まで自分へ移ったとは限りません。
これは「ファイルを持っていること」と「著作権を持っていること」が別だからです。
たとえばcmo3を持っていても、契約で第三者による改変が禁止されている場合があります。
PSDを持っていても、自由にグッズへ使ったり、別のイラストレーターへ渡して描き直したりできるとは限りません。
元データを受け取るかどうかと、
商用利用
改変
第三者への提供
著作権譲渡
は分けて確認します。
「元データ込み」と書いてあっても中身を確認する
依頼ページに「元データ納品可能」と書かれていても、何を指しているのか確認した方がよいでしょう。
Live2Dのcmo3だけなのか。
パーツ分け済みPSDも含むのか。
イラスト制作に使ったさらに前段階の制作データまで含むのか。
モーションを制作している場合は、その編集用データも含むのか。
「元データ」という言葉には一つの決まったファイル構成があるわけではありません。
欲しいものがあるならファイル名や目的まで確認します。
納品されたらZIPを解凍する前に元データとは別に保存しておく
納品後は、受け取ったデータをそのままバックアップしておくと安心です。
VTube Studioへモデルを入れると、その後に設定ファイルが追加されたり、自分でトラッキング設定やホットキーを変更したりします。
元の納品状態が分からなくならないよう、
「納品されたままのデータ」
と、
「実際にVTube Studioで使っているデータ」
を分けて保存しておくと、トラブル時に戻しやすくなります。
cmo3やPSDを受け取った場合も、配信用フォルダとは分けて保管した方が整理しやすいでしょう。
依頼前は「何が納品されますか」より将来したいことを伝える
VTuber初心者が依頼するときに、
「納品物は何ですか」
と聞いても、moc3、json、PSD、cmo3といった知らない名前を並べられると判断しにくいかもしれません。
その場合は、ファイル名ではなく将来したいことから聞く方法があります。
「納品後すぐVTube Studioで配信できる状態にしてほしい」
「表情切り替えも設定済みで受け取りたい」
「将来、別のモデラーへ修正を依頼できるようにしたい」
「新衣装を別のイラストレーターへ依頼する可能性がある」
と伝えます。
そこから、
配信用データ一式
VTube Studio設定
cmo3
PSD
のどこまで必要なのか確認します。
こちらの方が「必要そうだから全ファイルをください」と頼むより、目的に合った契約にしやすくなります。
必要な納品物は「今使う」と「後で直す」で分ける
VTuberモデルの納品物を考えるときは、すべてのファイルをもらうことを目標にする必要はありません。
今すぐ配信することが目的なら、VTube Studioなどで正常に動作する配信用モデル一式と、必要な表情・モーション・設定がそろっていることが重要です。
一方、
別のモデラーへ修正を頼みたい
モデルを大幅にアップデートしたい
新衣装や新パーツを追加したい
という将来まで考えるなら、cmo3やPSDの納品条件も確認します。
特に覚えておきたいのは、
moc3は配信などでモデルを使う側のデータ。
cmo3はLive2Dモデルを編集する側のデータ。
PSDは元イラストを修正・追加するときに関係するデータ。
という違いです。
「VTuberモデル一式を納品」とだけ書かれている場合は、ここまで含まれているとは限りません。
依頼前に、自分が今どこまで必要で、将来どこまで変更する可能性があるのかを考えて、納品物を確認することが重要です。
出典
株式会社Live2D|Live2D Cubism Editorマニュアル「ファイルの種類と拡張子」
株式会社Live2D|Live2D Cubism Editorマニュアル「組み込み用データ」
株式会社Live2D|Live2D Cubism Editorマニュアル「PSDのインポート」
DenchiSoft|VTube Studio Wiki「Loading your own Models」
DenchiSoft|VTube Studio Wiki「VTube Studio Model File」
DenchiSoft|VTube Studio Wiki「Expressions」
文化庁|誰でもできる著作権契約マニュアル
ActyWorks|LIVE2D
ココナラ|Vtuber向けLive2Dモデリング制作
ランサーズ|Vtuber・ゲーム・動画用Live2Dモデル制作
SKIMA|Live2Dモデリング・イラストから一括制作